研究概要 |
前年度に引き続きNOの2,3-Diaminonaphthalene(DAN)による蛍光誘導体化反応を利用して,NOのHPLC-蛍光定量法を更に詳細に検討した.また,前年度,NOがヘモグロビン類と迅速に反応・結合する事を利用して,DANとヘモグロビン類とのNOに対する競合反応を行わせて,トラップ効率の比較を行ったが,本年度は更にDimethyldithiocarbamic acid(DDTC)-Fe錯体のトラップ効果を検討した.その結果,DDTC-Feは最も強力なNOトラップ剤であることが分かった.次いで,本研究で開発したNOのHPLC蛍光検出法を植物細胞中のNOの定量に応用するための検討を行った.植物体中でのNOの作用は未だ詳しくは解明されていない.本研究ではAgave pacitticaのShoot細胞を継代培養したものを試料に用いた.培養細胞0.5gに,0.2mM DANの0.1%DMSO溶液を含むnitrite free Appendix C(pH5.9)25mLを添加後,25℃,3hインキュベートする.細胞液は遠心分離後,nitrite free Appendix C5mLで3回洗浄し,得られた細胞を1mLのメタノールでホモジナイズする.これを遠心分離し,上清の20μLをHPLCに注入した.インキュベーション前後のDANの蛍光強度から算出した細胞内への取込み率は19.6%であった.また,NO-DAN標準品のピーク強度から算出した細胞内のNO濃度は5.3±1.6pmol/g(n=3)であった.今後,更に植物細胞中のNO濃度を測定すると共に,細胞内NOがNOS由来であるかどうか,ストレス負荷により細胞内のNO量がどう変化するか,などを検討して行く.また,顕微組織化学的検討により,NO-DANの細胞組織内蛍光分布を調べ,植物体でのNOの発生機構などを検討したいと考える.
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