研究概要 |
ヒスチジンは、生体内において酵素histidine ammonia-lyaseによりウロカニン酸に代謝される。 本研究では、ヒトin vivoにおいてヒスチジンからウロカニン酸へのアミノ基脱離反応機構を解明するために、投与用の安定同位体標識ヒスチジンおよびGC/MS/SIMの内部標準物質に用いる標識ヒスチジンと標識ウロカニン酸を合成した。投与に用いるL-[3,3,5'-^2H_3,1',3'-^<15>N_2]histidine (1)は、DL-[5-amino-^<15>N]-2,5-diamino-4-oxopntanoic acidを出発原料として5工程で合成した。標識原料としては[^<15>N]チオシアン酸ナトリウム(99%atom)、[^<15>N]フタルイミドカリウム(99%atom)、重水(99.9%atom)を用いた。 標識ヒスチジンを投与した後、血液あるいは尿中のヒスチジンと代謝物ウロカニン酸(投与および内因性由来)をそれぞれ定量するが、GC/MS分析の内部標準物質として用いるDL-[2,3,3,5'-^2H_4,2'-^<13>C,1',3'-^<15>N_2]histidine (2)は、上述の標識ヒスチジン(1)の合成法に準じた。また、代謝物ウロカニン酸(投与および内因性由来)のGC/MS分析の内部標準物質[2,3,5'-^2H_3,2'-^<13>C,1',3'-^<15>N_2]urocanic acidは、重水中histidine ammonia-lyaseによる酵素反応を利用して(2)から合成した。本法は、^<13>C,^<15>N及び^2Hを目的とする位置に選択的、かつ高い標識率(87.3〜995.2%)で導入でき、しかも一連の合成ルートから数種の多重標識ヒスチジンとウロカニン酸を合成できる効率的な方法である。
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