研究概要 |
金属イオンやポリアミンが細胞増殖や、DNA、RNA、蛋白質の増殖つまり遺伝子発現制御機構に何らかのかかわりがあることが最近の研究で明らかにされてきた。また、Z-DNAと発癌には関連性があると報告されている。そこで著者らはZ-DNAを安定化させる物質と言われているポリアミンとZ-DNAの相互作用に関する研究を行った。まずDNA特にd(CG)_3をMgCl_2とNaClの高塩濃度下に入れ、さらに鎖長が異なり、アミノ基の個数が異なる4種類のポリアミン(N-(2-amino)-1,4-(diaminobutane) PA(24), spermidine PA(34), thermospermine PA(334), N-(2-aminoethyl)-N-(4-aminoethyl)-1,2-(diaminoethane)PA(222)を別々の溶液にいれ、そこへ先のDNA溶液を入れ結晶化を行い1.0Å分解能でのX-線結晶構造解析に成功しポリアミン存在下での金属イオンとDNAとの相互作用様式に関して多くの知見を得ることができた。これまでに世界ではd(CG)_3+Mg複合体、d(CG)_3+spermine複合体結晶の結晶構造解析はWangらによって行われている。本年著者らが解析した、d(CG)_3+PA(222)複合体結晶の解析結果は1980年代にP.KollmanやL.J.Martonらによってコンピュータによって予測されたカチオンと遺伝子との結合様式、安定化様式をX線結晶解析法によって世界で初めて常温で実証するものであった(論文作成中)。つまりポリアミンはZ-DNAのminor grooveに結合できないと言われていたものが完全にminor grooveに結合しZ-DNAを安定化していた。また、この複合体を水の存在下で分子動力学計算を行うとZ-DNAが非常に安定であることが証明された(論文作成中)。また本年度はZ-DNAをさらに安定化するであろうと考えられる物質を合成し来年度から結晶構造解析を行う予定である。また、本研究は本年度日本薬学会第118年会総会物理化学部会のハイライトに選抜された。
|