研究概要 |
[1]製剤処方探索:大豆レシチン(SL),コレステロ‐ル(CH),ステアリン酸(SA)とポリビニルピロリドン(PVP)の膜剤組成比を広範囲に変化させ,各添加剤の薬物溶出・粒子崩壊挙動に及ぼす影響を調べた。SL,CH及びSA含量を変化させることで薬物溶出のラグタイムとその後の溶出速度は多様に変化し,粒子の水中での形態変化はおおむね自己分散型,膨潤型,非膨潤型の3タイプに分類されることが判った。PVP添加量の増加も,薬物溶出抑制に大きく寄与した。このように膜剤組成比の変更により,上記製剤特性が広範囲に調節可能であることを明かにした。 [2]機能発現機構の解析:乾燥及び水和状態でのマイクロカプセル膜の相構造を,偏光顕微鏡・示差走査熱量分析装置・粉末X線回析装置により推定し,PVPを一定量合むSL‐CH‐SAの三成分系の相図にまとめた。乾燥時の膜相構造は水和により複雑に変化じ,形成したCHとSAを大量に溶かし込んだSL相の水和・膨潤特性が薬物溶出抑制に大きく寄与することが分った。膜相状態と薬物溶出・粒子崩壊挙動との関係が明かとなり,薬物溶出機構が推定できた。 [3]製剤化技術の開発:レシチン膜マイクロカプセルの微量調製技術の確立を目的に,噴流層コーティング装置を用いた異径二成分希釈法を開発した。モデル薬物2gを芯粒子に手作業で固定し,希釈粒子と共にコーティングすることにより,薬物含量35%,粒子径106-149μmのレシチン膜マイクロカプセルの調製に成功した。一方,高速楕円ロータ型乾式コーティング装置を用い,高い薬物含有量を有する薬物被覆粒子の調製を試みた。複雑な操作を必要とせずに高い被覆率を得るための操作条件が見いだせ,セルロース球形粒子(核粒子)・ラウリン酸(結合剤)のモデル系で,薬物含量43%,薬物被覆率95%の粒子の調製が可能となった。
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