癌の局所化学療法のための生体内崩壊性・短時間放出制御型マイクロカプセル製剤の開発

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09672204
• 研究機関: 神戸学院大学
• 研究代表者: 山岡 由美子 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (30102924)
• 研究分担者: 福森 義信 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (60102927)
• キーワード: 癌治療 / 局所化学療法 / マイクロカプセル / レシチン / 放出制御 / 生体内崩壊性 / コーティング / 多機能性微粒子

研究概要

1. マイクロカプセル(MC)膜の主成分であるリン脂質を大豆レシチン(SL)から相転移温度の高い水素添加卵黄レシチン(HEL)に変更し、製剤特性に及ぼす影響について調べた。HELと結合剤であるポリビニルピロリドン混合物の被膜から成るMCからの薬物溶出は速やかであったが、コレステロール(CH)やステアリン酸(SA)を単独添加することで薬物溶出は強く抑制され、両者の同時添加では添加量の増加に伴い溶出が促進された。これらCHやSA橋加の薬物溶出への効果は、SLの場合とは逆であった。SLの場合、膜特性は膜相構造と大きく関係していたのに対し、HELではCHやSA添加により変化する膜成分の相転移挙動が薬物溶出に大きく関係することが、水和膜混合物を用いた示差走査熱量分析より推察された。
2. 前年度開発した微量調製技術により、水難溶性モデル薬物(ガドベンテト酸ステアリルアミン誘導体、Gd-DTPA-SAm)を用いて被膜即崩壊型と被膜分散型のマイクロカプセルを調製した。これらMCではGd-DTPA-SAmは被膜と共に10μm程度の二次粒子として分散し、薬物とリン脂質との相互作用を利用することで新たな膜特性が引き出せることが示唆された。また、本製剤を正常ラットの肝動脈より投与した場合、製剤投与による肝組織障害性は軽微なものであることが生化学的・組織学的に確認された。
3. 肝癌モデルの作成を検討し、ラット乳癌由来Walker256細胞の移植により移植性肝癌ラットを、3-Me-BDH含有飼料の自由摂取(8-10週間)により原発性肝癌ラットを得た。
4. 高速楕円ロータ型乾式被覆法によるレシチン膜MC化の足掛かりとすべく、MC化が比較的容易なモデル被膜剤(市販のエチルセルロース水系分散剤の凍結乾燥物)を用い被覆効率に関する基本的な処方・操作因子を調べた。薬物放出制御が可能なMC膜の形成に一応成功した。

研究成果

• [文献書誌] Kaori Jono: "Dissolution Properties of Godolinium-Contoining Lecithin Microcapsules Prepared by a Spouted Bed Process Assisted with a Draft Tube" Advanced Powder Technology. 9(4). 363-375 (1998)
• [文献書誌] Yoshinobu Fukumori: "Preparation of Controlled Release Microcapsules by a High-Speed Elliptical-rotor Type Mixture" Proceeding of the world Congress Particle Technology 3. 120. (1998)
• [文献書誌] Kaori Jono: "Preparation of Lecithin Microcapsules by a Dilution Method Using the Wurster Process for Intraarterial Administration in Gadolinium Neutron Captuse Therapy" Chemical and Pharmaceutical Bulletin. 47(1). 54-63 (1999)
• [文献書誌] 市川 秀喜: "気中懸濁被覆法による医薬品のマイクロカプセル" ケミカルエンジニアリング. 43(11). 838-844 (1998)
• [文献書誌] 椿 淳一郎: "第36回粉体に関する討論会講演要旨集" 名古屋大学, 206 (1998)
• [文献書誌] 武内 洋: "第4回流動層シンポジウム・プロシーディング" 北海道工業技術研究所,化学工学会, 599 (1998)