研究概要 |
[1]抗がん剤封入マイクロカプセルの調製:前年度検討の結果から有望視された大豆レシチン(SL),コレステロール(CH),ステアリン酸(SA),ポリビニルピロリドン(PVP)の重量比5:5:2:5の膜処方を選択し,抗がん剤アドリアマイシ含有マイクロカプセル(ADR-MC)を調製した。前年度開発した異径二成分系希釈法に基づき,アドリアマイシン粉末0.9gを乳糖核粒子(75-90μm)0.7gに結合剤PVPを介して手作業で固定し,希釈乳糖(44-53μm,24g)とともに噴流層コーティングを行うことによって,薬物含量最高30%,粒子径106-149μmのアドリアマイシン含有レシチン膜マイクロカプセルの調製に成功した。 [2]ADR-MCのin vitro特性評価:ADR-MCからのADRの放出は2分から10分程度のラグタイムを有する短時間遅延放出を示すことが判った。コーティング量を調節することでラグタイム及びその後の放出速度が調節可能であった。また,低温間欠加熱滅菌(80℃で30分加熱を4回)したマイクロカプセルは日本薬局方無菌試験法に適合し,滅菌による溶出挙動の変化はごく僅かであった。ヒト血漿中では被膜が30分程度で分散消失することが確認された。 [3]ADR-MCのin vivo特性評価:ADR-MCを正常ラットの肝動脈注入した後の静脈血中へのADRの漏出をモニターしたところ,ADR水溶液投与では初期血中濃度が著しく高く,その後急速に減衰していく動態を示したのに対し,ADR-MCでは投与後初期にはADRの漏出が有意に低く抑えられ,その後徐々に血中濃度が上昇し,1時間をピークにして次第に減哀する動態を示し,in vitroでの放出挙動をよく反映する結果が得られた。
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