研究概要 |
我々はエビタケ由来の(Trachyderma tsunuodae K-2593)のビリルビンオキシダーゼ(BOD(Tra))と微生物由来(Acremonium sp HI-25)のアスコルビン酸オキシダーゼ(AOD(Acr))が、いずれの活性部位にType 1,Type2,Type3銅を持つマルチ銅酵素であることを明らかにした。本年はBOD(Tra)遺伝子の発現系の構築とAOD(Acr)の性質について検討した。 1)BOD(Tra)遺伝子発現系の構築 まず高発現系のベクターpTYE22m(GAPプロモーター)を用いてパン酵母(Saccharomyces cerevisiae)での発現を試みたがうまく行かなかった。そこでpYE22mにつないだBOD(Tra)遺伝子(W-7)の両端のシークエンスを読んだところ、アダプター配列仲NcoIサイトがあることが判った。NcoIサイトにはATGの開始コマンドがあり、ここから蛋白質の翻訳が始まってしまい、フレームがずれるために、BOD(Tra)が発現しなかったと推定された。そこで現在、出芽酵母(Saccharomyces crevisiae)及び、分裂酵母(Saccharomyces pombe)中での発現を検討中である。 2)AOD(Acr)の性質 アスコルビン酸オキシダーゼの基質であるアスコルビン酸のミカエリス定数(Km)とモル活性(Kcat)をpHを変化させて測定し、そのpH依存性を検討した。KmはpHに依存しなかったが、kcatはpH3.5-5.0では一定であったが、pH5以上になるとpHが上昇するにつれて小さくなることがわかった。この変化が酵素中のType1銅の酸化還元電位と関係有るのではないかと考え、酸化還元電位のpH依存性を検討したが、酸化還元電位はpH依存性を示さず、直接活性のpH依存性と関係づける事は出来なかった。
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