1)マルチ銅酵素(ビリルビンオキシダーゼ及びアスコルビン酸オキシダーゼ)の電子スピン共鳴装置による錯体化学的及び酵素化学的性質の解明 マルチ銅酵素の電子スピン共鳴(ESR)スペクトルは、Type1銅及びType2銅のスペクトルが重なり合い、非常に複雑なスペクトルを示す。ビリルビンオキシダーゼ(BOD(Tra))に種々の陰イオンを加えると酵素活性を阻害し、そのType2銅のESRスペクトルを変化させる。我々はこの事実から、陰イオンがType2銅に結合し、酵素活性を阻害すると報告した。しかしType2銅のESRスペクトルを、Type1銅のそれと完全に分離することが出来ない故、陰イオンの結合したType2銅のESRスペクトルを詳細に明らかにすることが出来なかった。最近、当学科にコンピューターが接続されたESR装置が設置され、種々のESRスペクトルのシュミレーションが可能となり、Type1銅とType2銅を分離して解析出来るようになった。この装置を利用し、種々の陰イオンが結合したときのType2銅、Type1銅を分離して解析したところ、種々の陰イオンは、明らかにType2銅と結合している事が判った。また、陰イオンの結合の際に、Type1銅とType2銅の間に電子イオンの不均化が起きている事が、そのESRスペクトルをType1銅とType2銅に分離して詳細に解析することにより明確にすることが出来た。 2)BOD(Tra)遺伝子の発現系の構築 昨年度は出芽酵母(Saccaromyces crevisiae)及び、分裂酵母(Saccharomyces pombe)中での発現を試みたがうまく行かなかった。今年は、種々のベクターを用いてその発現を試みたが、BOD(Tra)遺伝子の発現には成功しなかった。
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