研究概要 |
我々は、Trachyderma tsunodae K-2593から単離されたビリルビン酸化酵素(BOD)の遺伝子を単離しその塩基配列を決定し、これをDDDBJ/EMBL/GenBankのデータ-ベースにAB006824として登録した。また、BODの電子スピン共鳴や可視部吸収スペクトル及び酵素一分子中に含まれる銅イオンの数などから、BODは、タイプ1銅を一つタイプ2銅を一つタイプ3銅を二つ含むマルチ銅酵素である事を明らかにした。立体構造の判明しているズッキーニのアスコルビン酸酸化酵素との塩基配列の比較から、タイプ1銅にはHis, His, Cysが配位していると思われたが、もう一つの残基は普通のマルチ銅酵素に見られるMetでは無く、配位能力のないPheであった。故に、BODのタイプ1銅は、3配位状態であると思われた。タイプ2及びタイプ3銅については、ズッキーニから得られるアスコルビン酸酸化酵素とその配位残基は全く同じであった。BODのタイプ1銅の酸化還元電位を測定したところによると642mVとなり、ズッキーニのアスコルビン酸酸化酵素のMetが配位するタイプ1銅よりは、高い酸化還元電位を示した。これはタイプ1銅が3配位状態を取っていることに起因していると思われる。種々の陰イオンがビリルビン酸化酵素に特異的に結合するのを、タイプ1銅に特異的な可視部吸収スペクトルの変化から観察したが、陰イオンの種類によってタイプ1銅の吸収は増大したり減少したりした。電子スピン共鳴スペクトルから陰イオンはタイプ2銅に特異的に反応している事から、陰イオンによるタイプ1銅の吸収の変化は、タイプ2銅へ陰イオンが結合したためタイプ1銅とタイプ2、3銅間で電子が不均化したためと思われた。 種々の系で、BODの遺伝子の発現を試みたが成功はしなかった。
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