研究概要 |
1) ラット副腎髄質由来の神経細胞株であるPC12細胞で,ATP受容体刺激によって,神経伝達物質ノルアドレナリン放出と共に,低分子量GTP結合蛋白質ARFが細胞膜両分に移行する事を見いだした。ARFの移行も伝達物質放出も細胞外Caに依存していた。またコレラ毒素と24時間培養し,内在性のGsやARFをADPリポシル化した場合には,ATP受容体刺激やKC1脱分極刺激による伝達物質放出が減少し,ATP受容体刺激にARFの移行が関連することを明らかにした。 2) PC12細胞でのATP受容体刺激は,細胞外からのCa流人を促進させた。一酸化窒素(NO)のチオール型誘導体であるS-ニトロソシステインは,高濃度でこのATP作用を減少させた。一方,カフェインによるリアノジン受容体を介した細胞内CaプールからのCa動員は低濃度S-ニトロソシステインにより完全に消失した。またムスカリン受容体刺激によるIP3受容体を介した細胞内CaプールからのCa動員は高濃度のS-ニトロソシステインにより減少した。この結果は,ATP受容体に連関しているCaチャネル活性がNOにより調節されることを示している。 3) ラット初代培養グリア細胞において,リポポリサッカライド(LPS)やサイトカイン刺激によって誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現誘導が見られる。ATPと培養したグリア細胞では,LPSやサイトカイン刺激によるiNOS誘導が著しく増強されることを見いだした。このATP受容体を介した作用には,プロテインキナーゼCの活性化が必須であった。MAPキナーゼ群のうちERKやp38キナーゼは関与していないと考えられた。またATP受容体は核内転写因子NFκBの活性化を促進していることが推定された。
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