薬物性肝障害の発症における炎症・免疫性因子、特にサイトカインの介在性について、ラット四塩化炭素(CCl_4)肝障害モデルで検討した。 1. Wistar系雄性ラット(約6週齢)にCCl_45ml/kg(50%コーンオイル)を背部皮下に投与すると、肝酵素である血漿SDH、ALTが投与18時間から血漿に増加し、48時間にピークに達した。しかしこれらの最高値はALTで300units/ml、SDHで2000units/ml程度で、マウスモデルにおける酵素の逸脱度に比べてかなり低かった。 2. 血漿中のインターロイキン6(IL-6)活性(IL-6依存性細胞株の増殖性を指標に測定)はCCl_4投与後1.5時間から上昇傾向を示し、8時間後に最高値の約10ng/mlを示した。その後やや緩慢に低下するが32時間後でも低いながらIL-6は検出された。腫瘍壊死因子活性(感受性細胞の増殖阻害を指標に測定)は72時間の観察時間では検出されなかった。 3. CCl_4投与後のIL-6産生と投与局所の炎症反応あるいは疼痛との関連性が推測されたので、抗炎症薬およびβ受容体遮断薬のIL-6産生への影響を検討した。IL-6産生はデキサメサゾン前投与によって有意に抑制されたが、インドメサシン及びシメチジンによっては影響を受けなかった。アドレナリンは疼痛に伴って遊離されると予想されるが、アドレナリン投与がIL-6をラット血漿中に誘導することが報告されている。しかし、CCl_4投与によるIL-6の産生誘導はプルプラノロール投与では抑制されなかった。 現在、CCl_4投与による肝酵素の逸脱がデキサメサゾン前投与により上昇するという予備的結果を得ており、本モデルにおけるCCl_4投与後に出現するIL-6が部分的に肝細胞の破壊を予防している可能性が示唆された。
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