薬物性肝障害への炎症・免疫性因子の関与について、ラット四塩化炭素(CCl4)肝障害モデルで解析した。四塩化炭素をラットの皮下あるいは腹腔内に投与すると、それぞれ8時間及び4時間の比較的早期に血中にIL-6の上昇が起ったが、経口投与では血漿中にIL-6活性は観察できなかった。肝酵素の血中逸脱の動態は投与経路によって差異はあるが、逸脱のピークは、24〜28時間の範囲で、皮下および腹腔内投与に比べ経口投与の方が肝酵素の逸脱は大であった。肝酵素逸脱は肝組織障害を伴っていることは顕微鏡観察で明らかであった。四塩化炭素に対する溶媒(コーンオイル)量を増加させ四塩化炭素を皮下投与するとIL-6の誘導は低下し、逆に肝酵素の血中レベルは上昇した。また四塩化炭素を皮下または腹腔内投与する数時間前にdexamethasoneを投与すると、1mg/kg量で四塩化炭素によるIL-6の誘導は著しく低下したが、逆に肝酵素のレベルは顕著に上昇した。一方IL-6誘導が引き起こされない四塩化炭素経口投与系でもdexamethasone投与により肝酵素の上昇は起ったが、その程度は小さかった。 以上の結果は四塩化炭素によるIL-6の誘導と肝障害の間には密接な逆相関性があり、四塩化炭素の皮下あるいは腹腔内投与後初期に誘導される内因性IL-6が、肝障害の進展に抑制的に働く可能性を示している。本研究成果は肝障害機構に関する新しい知見であり、また肝障害モデル選択上での実用的意議を提供している。
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