研究概要 |
炎症細胞の一つであるマクロファージを刺激すると、細胞内の血小板活性化因子(platelet-activating factor,PAF)レベルが上昇し、同時に培養液中のprostaglandin E_2(PGE_2)レベルも上昇する。しかし、cyclooxygenase(COX)阻害薬により同時に産生されるPGE_2のレベルを低下させると、細胞内PAFのレベルは上昇する。平成9年度は、COX阻害薬により上昇する細胞内PAFの役割について、tumor necrosis factor-α(TNF-α)の産生亢進との関連で解析した。 ラット腹腔マクロファージをthapsigarginで刺激すると、PAF産生もPGE_2産生も同時に亢進し、またTNF-α産生も亢進した。この時、CoA-independent transacylase阻害薬であるSK&F98625を共存させると、細胞内PAFレベルも培養中のPGE_2レベルも、また培養液中のTNF-αレベルもSK&F98625の濃度に依存して低下した。この時、培養液中にPGE_2を添加してSK&F98625によるPGE_2産生抑制作用を打ち消しても、低下したTNF-α産生は回復しなかった。また、培養液中にPAFを添加しても、SK&F98625によるTNF-α産生抑制作用は打ち消されなかった。すなわち、細胞外に存在するPAFにはTNF-αの産生亢進を引き起こさないことが示された。一方、trapsigarginによるTNF-α産生亢進には、PAF受容体拮抗薬であるE6123、L-652,731あるいはCV-6209によって部分的に抑制された。これらの結果から、これらの拮抗薬は細胞内に入り込み、細胞内のPAFの作用に対して拮抗し、それによってTNF-αの産生を抑制していることが推定された。 以上の知見から、刺激により産生されるPAFは細胞内に留まり、TNF-α産生誘導に関与している可能性があることが示唆された。なお、本研究の一部はLife Sciences(1998)に受理されている。
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