研究概要 |
初年度である平成9年度は、ラットの肥満細胞株RBL-2H3細胞を用いて、MAP kinase阻害薬のIL-4産生に対する作用、及び、ステロイド性抗炎症薬のMAP kinaseの活性化に対する作用を検討し、以下の点を明らかにした。 1.MAP kinase阻害薬のIL-4産生に対する作用 RBL-2H3細胞を抗原で刺激すると、IL-4の産生が亢進する。この抗原刺激によるIL-4産生は、p38 MAP kinase阻害薬SB203580やp38 MAP kinaseとc-Jun N-terminal kinaseの活性化を抑制する、wortmanninで抑制されたことから、これらのMAP kinaseの活性化を抑制すればIL-4の産生が抑制されることが示唆された(論文作成中)。 2.ステロイド性抗炎症薬のMAP kinase familyの活性化に対する作用 ステロイド性抗炎症薬dexamethasoneはMAP kinase family(ERK,c-Jun N-terminal kinase,及びp38MAP kinase)の活性化をいずれも抑制した。またこのとき抗原刺激による細胞内の転写因子c-Junのリン酸化も抑制された(投稿中)。したがって、dexamethasoneはMAP kinaseの活性化を抑制することにより転写因子の活性化を抑制することが示唆された。 3.DexamethasoneのRaf-1活性化抑制作用 DexamethasoneはMAP kinaseの活性化に重要な役割を果たしているRaf-1の活性化を抑制するが、その細胞膜への移行を抑制しないことが明らかになった。したがって、dexamethasoneはRaf-1の膜移行後のリン酸化を抑制していることが示唆された。 以上のように、MAP kinaseの活性化抑制はIL-4の産生抑制につながること、dexamethasoneはMAP kinaseの活性化を抑制すること、その作用機構の一つとしてRaf-1のリン酸化抑制作用があることが明らかになった。現在、Raf-1のGST融合蛋白質を作成し、その活性化機構とdexamethasoneの作用機構を解析中である。
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