研究概要 |
平成10年に海洋細菌の増殖を特異的に阻害する抗生物質として,korormicinがYoshikawaによって発見され,その作用機構について研究を進めたところ,そのターゲットはナトリウムポンプ型NADH-quinone reductase(NQR)であることが判明した.そこで、その阻害様式を詳細に解析した結果,NQR反応のNa+で活性化され,Na+ポンプとして機能する反応領域で阻害を示すことが明かとなった.この反応領域はHQNOによっても阻害されるので,相互の関係を調べたところ,korormicinとHQNOの結合部位は完全には一致していないが,相互に重複した結合部位を持つことが明かとなった.これらの部位はNQRでの酸化還元反応とNa+排出の共役部位で,Na+ポンプの中心的機能を司り,これら特異的阻害剤はNa+ポンプ機能の解析に有用であることが分かった.一方,精製したNQRからの各サブユニットの分離・精製については,Nqr1,Nqr3,Nqr6およびNqr2,4,5(疎水サブユニット)が分離され,これらサブユニットからのNQR複合体の再構成はすべてのサブユニット存在下で初めて可能となることが確かめられた.このシステムを用いて,大腸菌で大量発現させたサブユニットの機能解析を進めたところ,Nqr1およびNqr6については有効なサブユニット精製法が確立した.なお,疎水性サブユニットNqr2,4,5については未だ各成分に分割することが出来ず,疎水性の高いサブユニットを機能を失わないように分離する方法の開発を進めている.
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