研究概要 |
白血球膜のシアリルルイスX糖鎖は,セレクチンなどのレクチンと結合し血小板や血管内皮細胞との接着に関わっていることが知られている.私達は,P-セレクチンがヒト単球に結合することによって,腫瘍壊死因子(TNF)の産生および放出が誘導されることを明らかにしてきた.今年度の研究においては,単球におけるTNFの産生に対する抗シアリルルイスX抗体の効果を検討した.ヒト末梢血より単離した単球と抗シアリルルイスX抗体(KM-93,2H5およびSNH-3,いずれもIgM,3〜10mg/ml)とともに2〜16時間培養し,その培養上清をマウス線維芽細胞L.P3の培養系に添加し16時間培養後の細胞障害性をTNF産生の指標とした.KM-93および2H5をヒト単球と共培養することにより,4時間以降に定常状態の約10倍程度のTNF産生放出が誘導された.上記の抗シアリルルイスX抗体とは結合特異性の異なる抗シアリルルイスXモノクローン抗体SNH-4(IgG)の場合においては,この抗体単独ではTNF産生放出の誘導は起こさないが,抗マウスIgG抗体を二次抗体として添加することによりTNF産生が惹起された。以上の結果より,IgM型およびIgG型の抗シアリルルイスX抗体では,半球の活性化に対する作用が異なることが示され,シアリルルイスX糖鎖の微細な構造の違い,あるいは糖鎖の担体分子の存在状態の違いが単球の活性化に影響する可能性が示された.
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