研究概要 |
本研究においては,白血球膜表面のシアリルルイスX糖鎖の多様性とこれらのセレクチン依存的な接着反応および白血球活性化における役割を解明することを目標とし研究を進め以下のような成果を挙げた。 1) 抗シアリルルイスX抗体を単球に作用させることにより,炎症性サイトカインの一つである腫瘍壊死因子(TNF)の産生が誘導されたが,モノクローン抗体の種類によって誘導能に差があった。また,この誘導は抗PSGL-1(P-selectin glycoprotein ligand-1)抗体で単球を前処理することにより部分的に阻害された。 2) P-セレクチン依存的な細胞接着率は,白血球表面のシアリルルイスX糖鎖の総発現量と必ずしも相関しなかったが,PSGL-1に結合しているシアリルルイスX量と相関した。 3) 好中球を固相化P-セレクチン上で培養すると活性酸素の産生が認められ,この時細胞表面のシアリルルイスX糖鎖は細胞の接着面に集合していることが観察された。 以上の結果より,セレクチン依存的な白血球の細胞接着とこれがもたらす白血球活性化は,基本的にはシアリルルイスX糖銷とセレクチンとの結合により媒介されるが,リガンド糖鎖の多様性,糖鎖担体分子の性状および存在状態なども重要な役割を担っている可能性を示すものと考えられた。
|