研究概要 |
本年度は卵母細胞系を用いる分子レベルでの調節機構を調べる実験と,脊髄切片を用いて一次感覚神経終末におけるシナプス伝達に対する調節機構を調べる実験のそれぞれについて,以下のような成果を得た。 (1)卵母細胞系:N型カルシウムチャネルについて見られるGタンパク質からの持続的な抑制がGタンパク質βγサブユニットによるものであること,protein kinaseCによるリン酸化がこの抑制を競合的な様式で排除すること,細胞内のGTP潅流によってこの抑制が消失することを明らかにした。また,共発現させたオピオイド受容体の刺激によってN型チャネルでは持続的な抑制と同じく,脱分極で解除されるような抑制がかかるが,Q型チャネルの場合には脱分極で解除されないような抑制がかかることを見出した。この脱分極で解除されない抑制はN型チャネルにGTPγSを適用した場合や,細胞内をGTPで潅流した場合に単離されうることを明らかにした。 (2)脊髄切片系:ラット後根付き脊髄スライスを作成し,人工脳脊髄液中にてBlind Patch-Clamp法を適用して後根刺激に対するEPSPを記録した。この応答はAδ線維を介するものとC線維を介するものの2種類が判別でき,C線維からの入力を高頻度で反復し激した場合にのみ脊髄ニューロンに緩徐な脱分極が起こること,この緩徐な脱分極がμオピオイド受容体刺激によって抑制されることを見出した。さらに,グルタミン酸による通常の興奮性伝達がN型チャネルを介して行われているのに対して,緩徐な脱分極を起こす伝達物質の放出にはP型チャネルが主として関与することを明らかにした。
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