研究概要 |
血清マンナン結合タンパク質(MBP)は、分子内にコラーゲン様構造をもつCa@@S12+@@E1依存性の動物レクチン(コレクチン)である。MBPは補体活性化作用やオプソニン効果をもち、生体防御因子の1つとして重要な役割を果たしている。MBPの転写調節機構を明らかにするために、前年度は、M.E.Taylorらによって報告されているヒトMBP遺伝子5'上流域(約840bp)についてプロモーター解析を行った。しかし、報告されている転写開始点より下流に正の転写制御配列の存在が示されることなどより、本年度は、改めてMBP遺伝子の5'-上流域の構造を明らかにした後に、転写制御配列を解析した。 1) 5'-RACE法により、ヒトMBPのnIRNAの5'末端を決定した。その結果、従来のexon1の5'末端の他に、exon1の上流に107bpの未知配列を含むものが見出され、これをexon0と名付けた。 2) ヒトMBPcDNAの配列をプローブとしてヒト胎盤genomicライブラリーをスクリーニングし、得られた陽性λクローンの塩基配列を決定し、intron/exon構造を明らかにした。ヒトMBPは5つのexon(exon0〜4)から成り、exon0を含む転写物とexon1から開始する転写物が存在した。それぞれに対して独自の転写プロモーターが存在し、両者ともTATAboxやCAATboxを含んでいた。 3) ノーザンプロット解析により、ヒト肝臓でexon0由来の転写物の発現が確認された。 4) ルシフェラーゼレポータージーンアッセイにより、exon0上流域,exon1上流域の転写活性を調べた。その結果、exon0上流域よりもexon1上流域の方が転写活性化能が強く、さらに、exon1の上流域に存在する、肝特異的転写因子であるHNF-3認識配列を含む領域を欠失させると、転写活性が約50%減少することがわかった。 以上の結果より、MBPのmRNAは主にexon1を開始点とし、その転写にはHNF-3が関与していることが明らかとなった。
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