血清マンナン結合タンパク質(MBP)はマンノース、N-アセチルグルコミンサンに特異的なコレクチン(Collectins;Collagen-like lectins)であり、補体の活性化やオプニソン作用を持ち、先天性生体防御因子として重要な役割をもつ。本研究はコレクチンの発現機構を解析し、生体防御への関わりを分子レベルで解明することを目的として行い、以下の3点を明らかにすることができた。 1.ヒト血清MBPの遺伝子の構造決定および転写制御配列の解析。 MBPは5個のexon(exon0〜exon4)から成り、2ヶ所の転写開始点を持つことが分かった。exon0およびexon1由来の転写物が存在し、それぞれの転写プロモーターが存在した。これらのプロモーター部位の欠失変異体を作成し、ルシフェラーゼレポータージーンアッセイにより、転写制御配列を解析した。MBPのmRNAは主にexon1を開始点とし、その転写には肝特異的転写因子であるHNF-3が関与していることが明らかとなった。 2.MBP遺伝子中の点突然変異と小児科領域におけるオプソニン不全症の関係の解明。 組み換え体を用いた代謝実験により、正常型と変異型のMBPの血中安定性を比較した。正常型、変異型の半減期はそれぞれ6.3時間、3.5時間であり、変異型は、オリゴマータイプが小さいために、より早く血中から消失し、代謝されることが分かった。 3.ヒトMBP遺伝子のプロモーター領域における遺伝的多型と発現量の関係の解析。 MBP遺伝子のexon1上流にはHY、LY、LXの3種の配列の多型があり、HY配列を持つヒトでは血清中のMBP濃度が高く、LYでは中程度、LXでは低いことが報告されている。HY、LY、LXの3種の塩基配列を持つ変異体を作成し、プロモーター活性を測定したところ、それぞれ高い、中程度、低い活性を示した。MBP遺伝子の転写レベルが血中MBP濃度を左右することが示唆された。
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