研究代表者は、グルタチオンーSートランスフェラーゼ遺伝子(GST-P)の発現制御機構について研究し、転写を負に制御するサイレンサーおよび制御因子の存在を明らかにしてきた。本研究においては、クローニングした制御因子の機能解析および転写に制御的に働く作用ドメインの解析を試みた。 1)サイレンサー結合蛋白質Nuclear Factor1(NF1)はファミリーを形成しているが、この中のNF1-Aが制御活性を有していることを明らかにした。さらに不活性化ドメインの同定を行った。 2)NF1-Aのゲノムクローンを単離し全ゲノム構造を明らかにした。 3)NF1-Bについては3種類のスプライシングアイソフォームの存在を明らかにし、これらの転写調節に及ぼす影響について検討し、状況に応じて正負両方の機能を持つことを明らかにした。 4)他の2つのファミリー、NF1-CおよびNF1-Xと上記のNF1-A、NF1-Bの4つのNF1ファミリーについて、DNA結合性の検討を行い4種間の性質の違いを明らかにした。 5)NF1の核移行シグナルを同定した。その結果、4種のアイソフォームに共通して存在する2つの核移行シグナルを同定した。 6)GST-P遺伝子サイレンサーに結合するC/EBPファミリーの一つC/EBPδは、C/EBPδ遺伝子の下流に存在する自分自身の結合部位を介して、転写が活性化された後、ファミリーに属するC/EBPδやCHOP10により、同じ部位を介して転写が抑制されることを明らかにした。 7)GST-P遺伝子のサイレンサーには、もう一つの未知蛋白質が結合することをすでに明らかにしているが、酵母のシステムにより、亜鉛フィンガーをDNA結合ドメインに持つ数種類の転写因子を同定した。
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