SREBPは脂肪酸合成、コレステロール代謝関連遺伝子の転写調節の中心的役割を担う調節因子である。SREBPには2種類の遺伝子によりコードされるSREBP-1とSREBP-2が存在し、その役割分担に関する知見はほとんどない。個々の機能を解析する目的でそれぞれを過剰に発現する培養細胞株の樹立を試みたが、生育に不都合なためか安定発現株は得られなかった。そこでHeLa細胞にlacIを発現させた細胞株を樹立し、これに培地にIPTGを添加したときのみ一過的にSREBP-2を発現するプラスミッドを導入した“23-11"細胞を獲得した。“23-11"細胞をIPTGを含む培地で培養すると、SREBP-2の発現が亢進し、それに伴い応答遺伝子の転写も亢進した。コレステロール代謝関連遺伝子mRNAが数倍の上昇を示したのに対し、脂肪酸合成酵素遺伝子mRNAはほとんど上昇が見られなかった。また、[^<14>C]酢酸を用いた取り込み実験では、コレステロール合成の有為な上昇が認められたのに対し、脂肪酸合成は上昇しなかった。これらの事実は、SREBP-2は主にコレステロール代謝関連遺伝子の転写調節に関与し、脂肪酸合成関連遺伝子の転写調節にはほとんど寄与しないことを示唆している。本細胞株を用いた実験系は、培地にコレステロールを添加し、内因性のSREBP-1、-2の活性化を抑制した条件下で、IPTG投与によりSREBP-2のみを一過的に発現させることができ、個々のアイソフォームの機能解析に有効なアッセイ系である事が判明した。
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