研究概要 |
小腸機能は、中枢神経系とは独立した自律神経系である壁在神経糸(enteric nervous system,ENS)により支配されているといっても過言ではない。そのため、いわゆる薬物の吸収もENSにより何らかの影響を受けていることが考えられる。そこで本研究では、受動拡散により吸収されるphenol red(PR)をモデル薬物として用い、その吸収挙動に及ぼすENS、特にアドレナリン作動性神経、コリン作動性神経の影響について検討を行った。 adrenergic agonistであるepinephrineによりラット小腸粘膜の抵抗値が増加し、PRの吸収が抑制されたことから、アドレナリン作動性神経は、小腸上皮細胞間のtight junctionをよりtightな状態にすることにより、paracellular routeを介する薬物の吸収を抑制することが考えられた。また、この吸収抑制作用は、Caco-2細胞を用いた検討では認められなかったことから、上皮細胞に対して間接的な作用であることが推察された。 cholinergic agonistであるbethanecholによりラット小腸からのPRの吸収が促進されたことから、コリン作動性神経は、薬物の吸収に対し促進的に作用することが推察された。しかしながら、この吸収促進作用は、Auerbach神経叢が存在しない状態では認められないことから、コリン作動性神経の吸収促進作用は、Auerbach神経叢において他の神経系に伝えられ、何らかのtransmitter/mediatorを介して上皮細胞に伝えられている可能性が考えられた。
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