細菌細胞の薬剤排出系と無機イオン排出系の構造,排出機構および制御機構

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09672230
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 土屋 友房 岡山大学, 薬学部, 教授 (80012673)
• 研究分担者: 島本 整 岡山大学, 遺伝子実験施設, 助手 (90187443)
• キーワード: 薬剤排出系 / イオン輸送系 / 黄色ブドウ球菌 / 緑膿菌 / 腸炎ビブリオ

研究概要

細菌細胞の膜には薬剤排出系やイオン排出系が存在する。現在我が国でも問題となっているいくつかの細菌(特に、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、腸炎ビブリオ)について、それらの細菌の主要な薬剤排出系を生化学面、遺伝子面から解析し、それら排出系の構造、機能、排出の分子機構、機能の制御機構を明らかにすると共に、イオン輸送系の構造、機能、輸送の分子機構との比較を行うことを目的とした。
まず、黄色ブドウ球菌について、反転膜小胞の調製法を開発して薬剤排出系の存在を明らかにした。ついで、薬剤耐性に関与するいくつかの遺伝子をクローニングした。それらの遺伝子について現在詳細な解析を進めている。また、ナトリウムイオン排出系についても遺伝子クローニングを行った。現在遺伝子構造の解析を進めているが、部分構造解析から新規排出系であることがわかっている。
緑膿菌からも新規薬剤排出系の遺伝子をクローニングし、構造を明らかにした。そして、これが緑膿菌のニューキノロン排出に最も深く関与している系であることを明らかにした。緑膿菌からもナトリウムイオン排出系遺伝子をクローニングし、構造を解析すると共に生化学的性状を明らかにしつつある。
腸炎ビブリオ細胞において、ナトリウムイオンの影響を受ける大変興味深い薬剤排出系を見出した。この系はナトリウムイオンとのアンチポートによって薬剤を排出している可能性がある。もしそうなら、これは全生物界における初めての発見となる。現在様々な面からこの可能性を検討している。また、遺伝子構造の解析を行い、他の薬剤排出系との比較検討を行っている。

研究成果

• [文献書誌] Rafiquel I.Sarker: "Primary structure and properties of the Na+/glucose symporter (SglS)of Vibrio Parahaemolyticus." Journal of Bacteriology. 179. 1805-1808 (1997)
• [文献書誌] Takato Noumi: "Identification and characterization of functional residues in a Na+/N+ antiporter (NhaA) from Escherichia coli by random mutagenesis." Journal of Biochemistry. 121. 661-670 (1997)
• [文献書誌] Kei Inaba: "Na+(Li+)/H+ antiporter in Pseudomonas aeruginosa and effect of Li+on cell growth." Biological and Pharmaceutical Bulletin. 20. 621-624 (1997)
• [文献書誌] Teruo Kuroda: "Mutational analysis of amiloride sensitivity in NhaA Na+/H+ antiporter from Vibrio parahaemolyticus." Journal of Bacteriology. 179. 7600-7602 (1997)
• [文献書誌] Kazuyo Kodama: "Preparation and characterization of everted membrane vesicles from cells of Staphylococcus aureus." Biological and Pharmaceutical Bulletin. 21. 5-9 (1998)
• [文献書誌] Kaori Nozaki: "A new Na+/H+ antiporter,NhaD,of Vibrio parahaemolyticus." Biochim.Biophys.Acta. (in press). (1998)