脳虚血モデルとしての初代培養細胞系の確立の基礎的研究として、ミクログリア細胞の初代培養と活性酸素産生能について以下のごとく検討した。 生後1〜2日目のラット新生児脳より髄膜を取り出し、ナイロンメッシュで濾すことで個々の細胞に分散させ、シャーレで2週間培養した。その後シャーレを振盪することにより接着能の弱いミクログリア細胞を剥離後、別のシャーレで更に培養した。こうして培養した細胞群は他の細胞群と比べて一回り小さく、またマクロファージ、好中球とミクログリアの細胞膜に特異的に存在するC3biリセプターに対する抗体でほぼ100%の細胞が染色されたことより、この培養系が純粋なミクログリア単独の培養系であることを確認した。 この培養系にスーパーオキシド(02-)により還元され発色沈殿するNBT色素を添加しておき、そこに好中球で02-産生を引き起こすことが知られているPMAで処理すると、ミクログリア細胞の78%は還元型NBT色素により染色されたが、PMAを加えていない対照群では6%しか染色されておらず、PMA刺激に対応して02-を産生することが明らかとなった。 しかし、この単独培養系から得られるミクログリア細胞の数はきわめて少なく、通常好中球からの02-産生量を定量するに用いられるシトクロムC還元法では充分な感度を得ることが出来ず、より高感度のMCLAを用いた化学発光法定量を用いることを現在検討中である。 一方、好中球における02-産生は細胞膜に存在するNADPHオキシダーゼにより引き起こされる。この酵素は幾つかの膜因子と細胞質因子からなる複合酵素系である。今回、これら因子の一つであるp47-phoxはミクログリア細胞にも存在することが抗マウスp47-phox抗体を用いたウエスタンブロッティング法により明らかとなった。
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