研究概要 |
脳虚血におけるミクログリア細胞の役割を検討する目的で、ミクログリア初代培養系を用いて活性酸素産生機構を好中球と比較検討し、以下の知見を得た。 初代培養したミクログリア細胞は蛋白質リン酸化酵素(PKC)の活性化剤であるPMA処理により持続的なスーパーオキシド(O2-)を産生した。活性酸素により微生物を殺菌すると知られている好中球に比べ約1/6〜1/8程度の産生能を示した。このO2-産生能は数種のPKC阻害剤により抑制されることから、好中球と同様に産生系にPKCが関与していることを明らかにした。また好中球のNADPHオキシダーゼ構成成分であるp47-Phox,gp-91phoxに対する抗体を用いたウエスタンブロッティングにより、ミクログリア細胞にもNADPHオキシダーゼの構成成分が存在することを見いだした。これらの結果よりミクログリアにおいても好中球と同様にO2-産生系としてNADPHオキシダーゼ系を有している可能性を強く示唆した。 一方、好中球のNADPHオキシダーゼ活性化にはp47-phoxの細胞質から細胞膜への移行が必須であるが、ミクログリア細胞においては細胞免疫染色法や細胞分画後のウエスタンブロッティングの結果より、刺激によるp47-phoxの細胞膜への移行という現象は認められず、休止状態においてすでに細胞膜画分に存在しており、好中球とは異なる活性化機構の存在を示した。 培養ミクログリア細胞を脳虚血時と同様の低酸素状態にすると、低酸素後、10分から一酸化窒素(NO)を産生し始め、酸素回復後も数時間はNOを産生しつづけることを発見した。これは、脳虚血時におけるミクログリアの役割に新たな可能性を加えるものである。
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