研究概要 |
これまでの実験結果から、ディーゼル排気微粒子(diesel exhaust particle,DEP)の暴露によって自己免疫疾患モデルであるマウスにおけるコラーゲン関節炎(collagen-induced arthritis,CIA)は増悪されることが明らかになったので,そのメカニズムについて検討した。 まず、本自己免疫性関節炎にはII型コラーゲン(type II collagen,CII)に対する抗体が関与しているので、DEP暴露後、抗CIIコラーゲン抗体IgGを測定した。また、本抗原特異的IgGのisotypeのうち、IgG2aは本疾患において強く関与していることが示唆されているので、本抗体を測定した。その結果、これら抗体産生はすべてDEP投与動物において増強されていたが、特にIgG2a抗体産生が著しいことが判明した。 また、in vitroの系において脾臓細胞による3H-thymidineの取り込みを調べることによってT細胞の幼若化反応を検討したが、本細胞のCII型コラーゲンに対する増殖反応はDEP処理群において有為に大きかった。 さらに、本自己免疫疾患モデルが種々のサイトカインによって制御されていると考えられているため、Th1サイトカインとしてIFN-γおよびIL-2ならびにTh2サイトカインとしてIL-4およびIL-10を測定した。DEP暴露マウスにおいてはすべてのサイトカイン産生の有為な促進がみられた。 以上の結果から、DEPの暴露によるCIAの増悪のメカニズムとしては、本大気汚染物質による抗原特異的抗体IgG、特にIgG2a産生の促進、ならびにサイトカイン、特に本自己免疫疾患において重要な役割を果たしていると思われるTh1サイトカイン産生の増強によると考えられる。同様のメカニズムによって、ヒトの慢性関節リウマチのような自己免疫疾患もDEP暴露によって影響を受ける可能性がある。
|