研究概要 |
(1) ディーゼル排気微粒子(diesel exhaust particle,DEP)の自己免疫疾患モデルであるマウスにおけるコラーゲン関節炎(collagen-induced arthritis,CIA)に対する効果について検討した。 まず、DEPのCIA発症に対する効果について調べた。種々の用量のDEPを鼻腔内に暴露期間を変えて暴露したが、その結果、DEPの用量依存的にCIAの発症率および重症度は増加するという結果を得た。次に、DEPのCIAの発症後の関節炎進展に対する効果について検討するため、CIAの発症後経時的に、DEPを鼻腔内投与た。その結果、DEP処理動物において関節炎の増悪がみられた。以上、CIAの発症および発症後における炎症の進展はともにDEPによって促進されるという知見を得た。したがって、慢性関節リウマチなどの自己免疫疾患は本大気汚染物質によって悪影響を受ける可能性がある。 (2) DEP暴露によるCIA増悪のメカニズムについて検討した。 本自己免疫性関節炎にはII型コラーゲン(typeII collagen,CII)に対する抗体が関与しているので、DEP暴露後、抗CII型コラーゲン抗体IgGおよびIgG2aを測定した。その結果、これら抗体産生はDEP投与動物において増強されていたが、特にIgG2a抗体産生が著しいことが判明した。また、本自己免疫疾患モデルは種々のサイトカインによって制御されていると考えられているため、Th1サイトカインとしてIFN-γおよびIL-2ならびにTh2サイトカインとしてIL-4およびIL-10を測定した。DEP暴露マウスにおいてはすべてのサイトカイン産生の有為な促進がみられた。以上の結果から、DEPの暴露によるCIAの増悪のメカニズムとしては、本大気汚染物質による抗原特異的抗体IgG、特にIgG2a産生の促進、ならびにサイトカイン、特に本自己免疫疾患において重要な役割を果たしていると思われるTh1サイトカイン産生の増強によると考えられる。
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