研究概要 |
上皮細胞は、生体防御のため、多種多様に分化した細胞から構成される。しかし、上皮細胞の分化制御については殆ど解明されていない。そこで本研究では、上皮細胞の分化制御機構の解明のために、研究対象として気道上皮細胞、特に漿液細胞を取り上げた。漿液細胞は気道粘膜下腺に存在する分泌細胞であり、lysozymeを産生する。これまでに私は、lysozymeの発現調節には、そのプロモーター領域のets binding siteが重要であることを明らかにした。さらに,漿液細胞に発現するlysozyme遺伝子の発現調節に関与するets関連遺伝子の同定を行った結果、MEF(myeloid Elf‐1 like factor)がlysozyme遺伝子の転写制御に関わっている可能性が示唆された。また、その発現分布およびlysozyme遺伝子のプロモーターとの関係についても検討した。In situhybridizationの結果、MEFはヒト気道において漿液細胞が存在する粘膜下腺に発現していた。さらに、MEFはlysozyme遺伝子のプロモーター領域に結合し、その転写を強力に活性化した。他のets family(ets1,elf‐1,ese,etc)では、lysozyme遺伝子の転写活性化はほとんど認められなかった。また、内因性MEFの発現をanti‐sense MEF mRNAで阻害したところ、lysozyme遺伝子の転写活性は低下した。MEF安定高発現株において,lysozyme蛋白の発現が認められた.これらの結果より、MEFは上皮細胞において、lysozymeの転写調節を行っていることが明らかになった。
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