ヒト肝に存在する4種のジヒドロジオール脱水素酵素アイソザイム(DD1〜DD4)の機能分化に必須な構造を解析し、その遺伝子多型性の臨床的意義を明らかにする目的で、今年度は、以下の項目について検討した。 1. 構造機能相関の解析 (1) DD4は2-アリルプロピオン酸系抗炎症薬により低濃度で活性化され、その活性化機構および結合部位は前年度明らかにしたクロフィブル酸系高脂血症薬と同一であることが判明した。また、生体内因性の本酵素の活性化剤として甲状腺ホルモンを同定した。 (2) DD1〜DD4間で異なるアミノ酸残基の部位特異的変異導入法により、120、129および137番目の残基が基質結合に、216番目の残基は補酵素の配向に関与することが明らかになった。 (3)) C-末端領域は、基質および阻害剤の結合に関与するとともに、構造の大きい活性化剤の結合にも関わるこのが判明した。 2. 変異遺伝子型の同定と臨床的意義の解析 (1) 肝臓に特異的に発現するDD4の変異遺伝子は、肝生検試料(40例)の分析ではいずれもヘテロ接合であったが、血液試料(137例)のゲノム解析により、変異遺伝子を同定し、1例にホモ接合変異遺伝子型を認めた。このホモ変異遺伝子保持者の家系分析はできなかったが、ヘテロ接合遺伝子については5つの家系調査を実施した。このアレル変異の頻度は約9%であったが、ヘテロ接合遺伝子保持者と肝疾患との相関性はまだみだされていない。 (2) DD4以外のアイソザイムの新たな変異遺伝子型を検討したが、現在の段階では、まだ見つかっていない。
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