フェニルエタノイド配糖体であるアクテオシドがマクロファージを活性化することを我々はこれまでに見出しており、今回、さらに、詳細に検討した。マウスマクロファージ様細胞J774.A1細胞をIFN-γでプライミング後、アクテオシドを添加し、TNF-α、IL-1β、IL-6の産生を測定したところ、TNF-α、IL-1βはアクテオシド0.1μg/ml、IL-6は1ng/mlの濃度から用量依存的にそれぞれのサイトカインの産生を増加させた。さらに、一酸化窒素の産生を測定したところ、アクテオシドは1ng/mlの濃度からその産生を増大させた。そこで、異なる細胞種に対する作用を、牛腎糸球体内皮細胞のGEN-T細胞を用いて検討した。アクテオシドは、GEN-T細胞に0.1μg/mlの濃度から用量依存的にIL-6産生の増大とU937細胞の接着を増加させた。そこで、GEN-T細胞へのU937細胞の接着活性を指標にして、アクテオシドの作用機序を検討した。まず、抗CD11b抗体と抗CD18抗体のGEN-T細胞への接着能に及ぼす効果を検討したところ、U937細胞の接着はほぼ完全に阻害され、アクテオシドがGEN-T細胞にICAM-1などの接着分子の発現を誘導して接着能を亢進させたと考えられた。そこで、アクテオシドのシグナル伝達系を探る目的で、各種の阻害剤の効果を検討したところ、アクテオシド刺激GEN-T細胞へのU937細胞の接着は、protein kianse C阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、細胞内カルシウムキレーター、EGTA、カルモジュリン阻害剤、スーパーオキシドジスムターゼにより阻害され、これらの結果より、アクテオシドのシグナル伝達には、少なくとも蛋白質リン酸化酵素、Ca^<++>とスーパーオキシドが関与していることが示唆された。植物由来の天然物でこの様な活性を有するものの報告はこれまでになく、今後さらに詳細にその作用機序を探るとともに、薬物としての応用を考えたい。
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