研究概要 |
アロマターゼ天然基質アンドロステンジオン(AD)の6位置換体でA,B環に二重結合を持つ化合物を取り上げ、それらの芳香核化とアロマターゼ阻害活性を検討した。 まず、前年度に合成された19-ヒドロキシ-6α-メチルADがアロマターゼにより効率的に芳香核化を受けることから、6位置換AD誘導体のエストロゲンへの変換経路を明らかとした。 ついで、市販されている[19-^3H_3,4-^<14>C]ADを、DDQで脱水素化し[19-^3H_3,4-^<14>C]-Δ^1-ADを得た。このものをヒト胎盤ミクロゾームとNADPH存在下インキュベートするとき、生成する[^<14>C]-エストロゲンと[^3H]-標識H_xOとHCOOHの量から,Δ^1-ADもADと同様に19-ヒドロキシ→19-オキソを経て19-メチル基はギ酸として放出し芳香核化されることを証明した。 また、6位に種々メチレン数を持つフェニルアルキル基を導入したADとそのΔ^1,Δ^6,やΔ^<1,6>-誘導体を合成し、それらのアロマターゼ阻害の構造活性相関を検討した。その結果、末端フェニル基がアロマターゼとの結合とアロマターゼの時間依存的不活性化反応に重要な役割を持つことが明らかとなった。さらには、ADの3-デオキシ体やその異性体、3種のADのA,B環位置異性体がADと同様にアロマターゼにより19位酸素化反応を受けることをGC-MSで証明した。一方、19-酸素化ADの4β,5β-エポキシドがエストロゲンに変換することを見い出し、アロマターゼ反応機構に新しい知見を得ることができた。 これら基質結合部位の空間的構造とアロマターゼ反応との関係から、A,B環不飽和AD誘導体によるアロマターゼ不活性化機構のみならずアロマターゼの基質特異性に新しい知見を加えることができた。
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