研究概要 |
アロマターゼ自殺基質や拮抗阻害剤の芳香核化を含めた酵素不活性化機構とアロマターゼ反応について、以下の成果を得ることができた。 1. アロマターゼ自殺基質であるΔ^1,Δ^6,ならびにΔ^<1,6>-アンドロステンジオン(AD)とそれら6-アルキル体のヒト胎盤アロマターゼによる芳香核化のキネティックスを、GC-MSで初めて明らかにした。すなわち、Δ^1-ADがADと同程度の優れた基質となるが、Δ^6やΔ^<1,6>-ADは基質としての能力は低く、一方、6位アルキル置換基の立体化学や長さが、それぞれのステロイドの芳香核化反応に異なる影響を与えること、阻害定数(K_1)とk_m値との間に直接的な相関性はないものの、Δ^1とΔ^<1,6>-ADシリーズでは、いずれも自殺基質としてのアロマターゼ不活性化反応が芳香核化反応と密接に関連するなどが判明した。さらには、6-アルキルAD誘導体が、19-ヒドロキシ体を経てエストロゲンに変換することが明らかとなった。 2. 化学的に合成された[19-^3H_3,4-^<14>C]-Δ^1-AD]がエストロゲンに変換するとき、19-メチル基は^3H_2Oと^3HCOOHとして放出されることから、Δ^1-ADの芳香核化反応はADと全く同じ機構によることが証明された。 3. ADとそのΔ^1,Δ^6,Δ^<1,6>-誘導体の6-フェニルアルキル置換体を合成し、そのアロマターゼ阻害活性より本酵素の中心部位の構造に新しい知見を加えることができた。 4. ADの3種のA,B環位置異性体や3-デオキシステロイドがアロマターゼにより19位に酸素化反応を受けることをGC-MS分析で明らかとし、アロマターゼの触媒機能を拡大することができた。また、19-酸素化ADの4β,5β-エポキシドがエストロゲン生合成の中間体となりうろことを証明した。
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