Inter-alpha-trypsin inhibitor family heavy chain-related protein(IHRP)はその発現機構と生理活性が明確ではなく、本研究でその点を解明する事を目的とした。 実験モデルとしてマウスを用いるために、マウスのIHRPcDNAをクローニングし塩基配列を解析し、ヒトのIHRPcDNAと比較検討しその相同性を確認した。また、マウス血清からマウスIHRPを部分的に精製し、N末端アミノ酸配列を調べヒトIHRPと一致すること、並びにマウスIHRP cDNAを翻訳したアミノ酸配列にも一致することを確認した。 本タンパク質が急性期タンパク質であることから、テレピン油並びにリポポリサッカライド(LPS)を用い、実験的にマウスに炎症を起こさせ、IHRPの発現の変化を調べた。両誘導物質を用いた場合に、無処置ではほとんど検出出来ないIHRPが有意に増加することをノーザンブロット解析ならびにウエスタンブロット解析により認めた。この実験系においてデキサメタゾンの効果を調べたところ、テレピン油によるIHRPの誘導は効果的に抑制されたが、LPSによるIHRP誘導はデキサメタゾンでは抑制されなかった。 本タンパク質の生理機能解析のためにノックアウトマウスを作成することを目的にマウスIHRP遺伝子のプロモーター領域を分離し解析したところ、ヒトIHRP遺伝子プロモーター領域に存在するSTAT3サイトが同じような位置に保存されていた。プロモーター領域をプローブとしてテレピン油処置マウス肝核抽出液を用いたゲルシフトアッセイで明確なバンドシフトが確認され、炎症におけるIHRP発現にはSTAT3が関与していることが示唆された。
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