イソプレノイド化合物であるビタミンK2(メナキノン4)およびその側鎖のゲラニルゲラニル基を有するゲラニルゲラニオールが、ヒトの固形癌由来細胞株12種の細胞増殖に与える影響を調べた。ビタミンK2は、胃癌細胞株5種、大腸癌細胞株3種、肝癌細胞株1種の増殖には影響を与えなかったが、膵臓癌細胞株2種のうちのMIA PaCa-2、および卵巣癌細胞株TYK-nuの増殖を濃度依存的に阻害した。TYK-nu細胞に対するIC_<50>は142.0±1.4μMであった。ビタミンK2処理により、MIA PaCa-2およびTYK-nu細胞の核のクロマチンの凝集が観察されるので、アポトーシスが誘導されていると考えられる。一方、ゲラニルゲラニオールは調べた全ての固形癌細胞に対し増殖阻害作用を示し、IC_<50>値は30-90μMであった。正常の膵臓細胞に対しては、ビタミンK2およびゲラニルゲラニオール共に増殖阻害作用を示さなかった。 ヒト白血病U937細胞を用いてゲラニルゲラニオールのアポトーシス誘導機構を調べた結果、MAPキナーゼの一種であるJNK(Jun N-terminal kinase)が経時的に活性化された。一方、多くのアポトーシス誘導剤で活性化されるCaspase-3もゲラニルゲラニオール処理により活性化された。Caspase-3の阻害剤であるZ-AspやZ-DEVDを共存させると、ゲラニルゲラニオールによるCaspase-3およびJNKの活性化が阻害されたので、ゲラニルゲラニオールによるアポトーシス誘導のシグナル伝達においてCaspase-3はJNKの上流に位置すると結論された。
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