本研究は、中枢神経系前シナプスに局在しているPNP14のリン酸化反応を介した情報伝達系や、神経細胞の分化、老化および神経伝達物質放出への関与、結合タンパク質について解析すること、およびPNP14遺伝子変異固体マウスを作製し、発生学的、形態学的、分子生物学的、行動学的に詳細に解析することを目的として行われ、以下の結果を得た。 1)PNP14mRNA発現の解析 PNP14遺伝子に対する特異的オリゴプローブを作成し、加齢に伴うラット脳内におけるPNP14mRNAの変化について、in situ hybridization法により解析した。生後7週齢のラットにおけるmRNA発現は、嗅球、海馬、小脳顆粒層で強い発現が認められたが、1、2年齢と加齢に伴って、それらの部位における発現量は有意な低下を示した。 2)PNP14のチロシンリン酸化 PNP14cDNAのTyrをPheに置換した部位特異的変異体を作製し、GST融合タンパク質発現系ベクター、(pGEX-3X)に構築してリン酸化反応の基質に用いた。リン酸化酵素にEGF受容体、およびsrc-kinaseを用いてりリン酸化反応を行い、そのリン酸化部位が前者により127Tyrが、後者により39Tyr、および127Tyrが有意にリン酸化されることを明らかにした。 3)結合タンパク質の解析 GST融合wild type PNP14をグルタチオン-アガロースゲルに固定化し、ラット脳のcytosolと可溶化膜画分を試料として、affinity chromatographyを行った。cytosolから結合タンパク質として、主要な2種類のタンパク質を見出し、現在解析中である。 4)トランスジェニックマウスの作成 マウスの導入遺伝子は、マウスcalmodulin kinase IIプロモーターにラットにラットPNP14cDNAを連結して作製した。現在、このDNAをマウス受精卵の核にマイクロインジェクションを行っている。
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