研究概要 |
出血性大腸菌O-157の感染後にしばしば認められる容血性尿毒症症候群(HUS)は腎糸球体内皮細胞の機能的および機械的障害が引き金となって,糸球体に血栓を多発させることが主要な原因と言われている.内皮細胞における血栓形成の調節はトロンボモジュリン(TM)と組織因子(TF)の発現調節に依存することが多い.TMは健常な血管内皮細胞の膜表面に発現する血栓形成抑制因子であり,組織因子(TF)は健常な内皮細胞には発現していないが種々刺激を受けたとき発現が誘導されてくる血栓形成促進因子である.本研究はO-157などの産生するベロ毒素が培養血管内皮細胞のTMよびTFの発現をどのように乱し,HUS発症の引き金を引くのかを解析することを目的とする. I.ベロ毒素による培養ヒト血管内皮細胞のTM発現低下とTF発現誘導の解析 I.ベロ毒素は10^<-10>g/mlから濃度および時間に依存してTMの発現量を低下させ,逆にTFの発現を誘導することが明らかになった. 2.ベロ毒素の上記作用はエンドトキシンと相乗的に作用することが明らかになった. 3.ベロ毒素による内皮細胞TMの発現量低下は遺伝子転写レベルでの低下と細胞傷害の両作用によること.TFの発現誘導は転写レベルの活性化によることが明らかになった. 4.ベロ毒素によるTFの発現誘導は転写因子NFκBおよびAP-1を介していることが明らかになった.
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