本年度は、酸化タンパク質を選択的に分解するヒト赤血球のセリンプロテアーゼの構造に関する研究と分布および発現に関する研究を平行して実施し、以下の成果を得た。 1.構造に関する研究 すでに確立した方法でヒト赤血球細胞質から本酵素を精製し、エンドペプチダーゼにより限定分解し、得られたペプチド断片をHPLCにて分離して数種類のペプチド断片を得た。これらの断片のアミノ酸配列を決定し、既知タンパク質とのホモロジーを検索したところ、ヒトのアシルアミノ酸遊離酵素とホモロジーの高い新規タンパク質であることが判明した。次年度は、判明した部分アミノ酸配列をもとに本酵素のcDNAのクローニングを行う予定である。 2.分布および発現に関する研究 本酵素に対する特異抗体を作製し、これを用いて本酵素の分布と発現について検討した。ヒト赤血球の膜にも本酵素が結合しており、酸化された膜にはより多く結合することがわかり、赤血球が酸化されると細胞質から膜に移行することが示唆された。ヒトの赤芽球系、単球系、リンパ球系の培養細胞、および血漿中にも本酵素が存在することがわかった。また、赤芽球系細胞が赤血球に分化する過程で本酵素の発現量が増大することがわかった。さらに、マウスの赤血球や血漿および各種組織にも本酵素と共通の抗原性を持つタンパク質を存在が示唆された。
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