1. 生体内脂質過酸化測定法としてのチオバルビツール酸(TBA)試験法の確立を行った。 2. ラットに、ビタミンEを等量含む、n-6系高度不飽和脂肪酸含有食餌とn-3系高度不飽和脂肪酸含有食餌を投与し、6週間後の赤血球の膜を調製した。膜のリン脂質の脂肪酸組成は食餌脂肪酸組成を反映しており、n-3系不飽和脂肪酸摂取群の方が酸化を受けやすい状態であった。膜リン脂質のヒドロペルオキシドおよびTBA定量値に、両食餌群で差はなかった。赤血球膜のタンパク質凝集の程度にも差はなかった。赤血球膜のビタミンE量はn-3系不飽和脂肪酸食餌群の方が若干低下していた。両群の赤血球膜を試験管内で酸化するとリン脂質ヒドロペルオキシドやTBA値はn-3系不飽和脂肪酸食餌群の方が上昇したが、タンパク質凝集は上昇しなかった。以上のことから、赤血球膜の酸化的ストレスによる変性はビタミンEが十分量存在するかぎり高度不飽和脂肪酸は悪影響を及ぼすわけではないことがわかった。 3. 同じように飼育したラットの脳、肝、肺、心、腎、脾、精巣、胃の8種の臓器について試験した。その結果、いづれの臓器の全脂質の脂肪酸組成も食餌脂肪酸組成を反映していた。いづれの臓器のビタミンE値もn-3系不飽和脂肪酸食餌群でやや低下していた。いづれの臓器のリン脂質ヒドロペルオキシド、TBA値とも両食餌群で差はなかった。以上のことから、臓器脂質の酸化ストレスによる変性はビタミンEが十分量存在するかぎり高度不飽和脂肪酸は悪影響を及ぼすわけではないことがわかった。 高度不飽和脂肪酸が酸化的ストレスに防御的にはたらくとの積極的な実証は得られなかったが、少なくとも高度不飽和脂肪酸の摂取は酸化的ストレスによる悪影響を増大するものではないし、ビタミンEとの連携作用で酸化的ストレスを排除しているとの結果が得られた。
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