研究概要 |
1. HFの作用部位(レセプター)の検討 Viperaaspis毒から精製したHFのFXSによる蛍光標識を行い,ヒト臍帯静脈血管内皮細胞に作用させたところ,HFの細胞表面への結合、および細胞増殖効果が確認された.またHFは各種血管内皮細胞には作用を示したが,平滑筋細胞や上皮細胞に対する増殖促進効果は認められなかった.さらにHFの細胞増殖効果は高濃度のヘパリンにより阻害されたことから,HFは血管内皮細胞表面に特異的に発現しているレセプターと結合する可能性が示唆され,また結合にはVEGF同様ヘパラン硫酸が関与すると考えられた.細胞表面のヘパリナーゼ処理は,HFの細胞への結合性を変化させた. 2. HFとVEGFの構造と活性との関連 HFとヒトVEGFの一次構造はN末側50残基で相同性60%,C末側(71残基以降)では25%であった.両者の作用を比較すると,細胞増殖作用はVEGFがHFの5-10倍,毛細血管透過性亢進作用は同程度であったが,血圧降下作用はVEGFにはほとんど認めらなかった.またプラスミンによりHFのC末側を切断したものは全く血圧降下作用を示さなかったが,細胞増殖作用は50%程度残存しており,血圧に対する作用の違いはC末側の構造の違いに起因する可能性が考えられた.ウエスタンブロッティングの結果と同様,抗VEGFポリクローナル抗体はHFの細胞増殖作用を阻害したが,抗HFポリクローナル抗体はVEGFの細胞増殖作用に全く影響を与えなかったことも,HFとVEGFの構造上の違いが活性に反映している結果と考えられた.
|