研究概要 |
1.PLA_2の触媒機構の解明-ウシ膵臓由来PLA_2のプロ体とアミド基を持つ基質アナログ型阻害剤との複合体のX線結晶解析を行った結果,阻害剤のアミド基が酵素の触媒基であるHis48と水素結合を形成することが明らかになった.他方,種々のアルデヒドテルペノイドによるPLA_2の不活性化を調べたところ,ある種の単環式セスキテルペンがLys残基を修飾することによってPLA_2を強く不活性化した.その作用には化合物の幾何異性と2重結合が重要であると共に,酵素の56位のLys残基を修飾することがわかった.また,モデル反応実験からこのセスキテルペンは,シッフ塩基生成後,安定な環状構造の付加物を生成することも明らかになった. 2.PLCの触媒機構の解明-Bacillus cereus菌由来SMaseの加水分解反応におけるAsp126とAsp156の役割を調べた結果,Asp126のイオン化は基質結合を強め,触媒作用をわずかに弱めるのに対し,側鎖自体は水溶性基質であるHNPとの結合を強め,真の基質であるSMとの結合を弱めるが,両基質に対する触媒作用を強めることが明らかになった.他方,Asp156は,イオン化による影響か側鎖自体による影響かは判定できなかったが,基質結合を弱め,HNPに対する触媒作用を弱めるが,SMに対する触媒作用を強めることが明らかになった.次に短鎖のSMを合成し,その立体異性体のSMaseによる加水分解を調べた結果,天然物と同じ立体配座を持つD-erythro体が最も強く加水分解を受け,L-erythro体はD-erythro体の約14%,L-threo体は約8%しか加水分解されないことがわかった.また,D-threo体の加水分解物は検出出来なかった.この結果から,本酵素にはそれほど厳密な立体選択性のないことが明らかになった.
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