研究課題/領域番号 |
09672265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
伊藤 文昭 摂南大学, 薬学部, 教授 (80111764)
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研究分担者 |
芝本 さゆみ 摂南大学, 薬学部, 助手 (80178920)
堀 隆光 摂南大学, 薬学部, 講師 (00199522)
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キーワード | 上皮増殖因子 / グルココルチコイド / インテグリン / 細胞外マトリックス / 細胞運動 / 細胞接着 |
研究概要 |
生体内の個々の細胞は、周囲の細胞あるいは細胞外マトリックスに結合することにより、器官や組織に特徴的な形を作り上げている。一方、発生段階での組織や器官の形成、誕生後の炎症や損傷治癒においては、細胞は元の場所から周囲へ運動(移動)していくことが必要である。細胞がその場に留まるのか、あるいは移動していくのかは、多数の分子が関与した複雑な機構により厳密に制御されており、癌細胞が浸潤・転移する一つの原因として、この制御機構の破綻が考えられる。私達は、上皮増殖因子(EGF)が上皮系細胞の運動を促進すること、また、副腎皮質ホルモンのグルココルチコイドがEGFにより促進される細胞運動を抑制することを見つけており、生体内では、これらの生理活性物質が組織の形成や細胞運動の重要な制御因子として働いている可能性が考えられる。本研究では、グルココルチコイドの一種であるデキサメサゾンとヒト胃癌細胞株(TMK-1)を用いて、グルココルチコイドの細胞運動抑制作用の分子メカニズムを調べた。その結果、デキサメサゾンは、インテグリンα1鎖のmRNA発現量を時間依存的に増加させ、細胞表面に存在するインテグリンα1β1量を増加させることが明らかとなった。また、α1あるいはβ1に対する抗体の添加により、デキサメサゾン処理による細胞接着性の亢進は抑制されることが分かった。TMK-1細胞にα1鎖を過剰に発現させた細胞の運動性は、TMK-1細胞の半分に低下しており、EGF処理による細胞運動性の亢進は見られなかった。以上の結果より、グルココルチコイドは、インテグリンを介した細胞外マトリックスに対する接着を強固なものとし、EGFの細胞運動促進作用に拮抗的に働くと結輪された。
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