研究課題/領域番号 |
09672265
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
生物系薬学
|
研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
伊藤 文昭 摂南大学, 薬学部, 教授 (80111764)
|
研究分担者 |
芝本 さゆみ 摂南大学, 薬学部, 助手 (80178920)
堀 隆光 摂南大学, 薬学部, 講師 (00199522)
|
研究期間 (年度) |
1997 – 1998
|
キーワード | 上皮増殖因子 / 肝細胞増殖因子 / グルココルチコイド / 細胞運動 / インテグリン / 細胞外マトリックス / 細胞接着 / 接着斑 |
研究概要 |
生体内の個々の細胞は、周囲の細胞あるいは細胞外マトリックスに結合することにより、器官や組織に特徴的な形を作り上げている。一方、発生段階での組織や器官の形成、誕生後の炎症や損傷治癒においては、細胞は元の場所から周囲へ運動(移動)していくことが必要である。細胞がその場に留まるのか、あるいは移動していくのかは、多数の分子が関与した複雑な機構により厳密に制御されており、癌細胞が浸潤・転移する一つの原因として、この制御機構の破綻が考えられる。 細胞の運動を促進する物質としては、種々の細胞増殖因子が知られている。一方、細胞運動を抑制する生体内物質に関する知見はほとんどない。本研究において、私達は、副腎皮質ホルモンのグルココルチコイドが、肝細胞増殖因子あるいは上皮増殖因子(EGF)といった細胞増殖因子の作用に拮抗して、細胞運動を抑制することを見つけた。また、グルココルチコイドは、(1)細胞外マトリックス(ラミニン、コラーゲンTypeIV)に対する細胞接着性を上昇させること(2)α1およびβ1インテグリンの生合成を促進すること(3)細胞表面のα1およびβ1インテグリンの発現量を増加させること(4)インテグリンと細胞外マトリックスとの接着部位に形成される接着斑(Focal contact)を増加させること、を明らかにした。α1あるいはβ1に対する抗体がグルココルチコイドの細胞接着促進作用を抑えられることから、グルココルチコイドは細胞表面のインテグリンα1β1量を増加させ、細胞外マトリックスへの細胞接着を促進していると結論された。また、EGFは、細胞の移動方向に形成される突起部を中心に接着斑を形成させるのに対し、グルココルチコイドは細胞底部全体に接着斑を形成させた。このグルココルチコイドによる接着斑形成が、EGFにより引き起こされる細胞運動を抑制するように働いている可能性が考えられる。
|