研究概要 |
活性型ビタミンD誘導体の構造と活性との関連性を明らかにする目的で、本年度はビタミンD誘導体の(1)合成、(2)定量法の開発、(3)細胞レベルでの生理活性試験、(4)細胞レベルでの代謝、そして(5)動物レベルでの生理活性試験を行い、以下の知見を得た。 (1)活性型ビタミンDのA環2β位に様々な置換基を導入した誘導体(2β誘導体)とA環10(19)位のメチレンと1位または3位のいずれかの水酸基が同時に脱離した誘導体(19ノルデヒドロキシ誘導体)を合成しその生理活性を検討した。その結果、2β誘導体は持続型D製剤への応用が期待され(Chem Pharm Bull 45:1626,1997)、また19ノルデヒドロキシ誘導体はガン細胞の増殖抑制効果が強いこと(Tetrahedron Lett,in press)が明らかになった。 (2)ビタミンD関連化合物の簡便かつ正確な定量法の開発を目指し、固相カラムとHPLCを併用した定量法(J Chromatogr B691:313,1997)と電気化学検出器を装着したHPLCによる定量法(J Pharmaceut Biomed Anal 15:1497,1997)を検討し、ほぼ所期の目的を達成した。 (3)19ノルデヒドロキシ誘導体のヒト前骨髄性白血病細胞(HL-60)に対する増殖・分化調節能と遺伝子転写調節能を検討し、1位に水酸基を持たない誘導体でも活性型ビタミンDと同等の遺伝子転写調節能をもつことを初めて明らかにした(Tetrahedron Lett,in press)。また活性型ビタミンDが腎臓の染色体DNA上の特異的DNA配列を認識してリン輸送担体遺伝子発現を調節することを明らかにした(Osteoporosis Japan 5:62,1997)。更に、活性型ビタミンDは活性化T細胞の免疫反応に関与する液性因子の発現を遺伝子レベルで調節することを明らかにした(J Immunol 160:209,1998)。 (4)骨芽細胞において活性型ビタミンDの新規代謝物(3エピ化活性型ビタミンD)を発見した(腎と骨代謝 Kidney Metab Bone Dis 10:417,1997)。 (5)活性型ビタミンDの2β誘導体は、骨粗鬆症モデルラットにおける骨量減少の予防効果をもつことを明らかにした(Chem Pharm Bull 45:1626,1997)。
|