実験にはHartley系雌性モルモットを用い、卵白アルブミンを抗原として感作した。感作14日目のモルモットの鼻粘膜に2.5%抗原溶液25μlの点鼻により抗原抗体反応を惹起させた。血管透過性亢進、くしゃみおよび鼻掻き行動によりアレルギー反応の発症を確認した。点鼻後30分間くしゃみおよび鼻掻き行動を観察した後に、6、12、24、48、72時間後に鼻組織を採取し、固定・脱灰・包埋後に鼻中隔部位の薄切を行い、ルナ染色を行った。光学顕微鏡により鼻粘膜中の好酸球数をカウントすると、点鼻6時間後より鼻粘膜中への好酸球の集積が観察され、24時間後にその集積は最大になった。この集積増大は、抗PAF薬apafant、ロイコトリエン受容体桔抗薬pranlukast hydrateにより有意に抑制され、抗ヒスタミン薬diphenhydramineあるいはebastineにより一部抑制された。また、点鼻24時間後に鼻粘膜100mgを採取し、mRNAを精製した後、逆転写酵素を用いてcDNAを作成した。このcDNAをtemplateに用いてMIP-lαの塩基配列から作成したprimerによりPCR反応を行い、DNA断片が増幅されるか否かについて検討した。その結果、MIP-lαmRNAは対照群に比較して明らかに抗原抗体反応により亢進された。ラット腹腔肥満細胞において抗原抗体反応によりMIP-lαmRNAの発現亢進も確認しているので、鼻粘膜によるMIP-lαmRNA発現に肥満細胞も関与していることが強く示唆された。また、このMIP-lαmRNAの発現亢進は抗ヒスタミン薬ebastineにより抑制された。このことから、肥満細胞のみならず肥満細胞から遊離されたヒスタミンが血管内皮細胞等でヒスタミンH1受容体を介してMIP-lαmRNAの発現亢進を誘発している可能性が明らかになった。
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