昨年度の研究により、抗原抗体反応により鼻粘膜でMIP-1 α mRNAの発現が亢進すること、このMIP-1 α mRNAの発現亢進は抗ヒスタミン薬により抑制されること、肥満細胞のみならず肥満細胞から遊離されたヒスタミンが血管内皮細胞等でヒスタミンH1受容体を介してMIP-1αmRNAの発現亢進を誘発している可能性が示唆された。今年度は更に研究を進め、無感作のモルモットにヒスタミンを点鼻すると、抗原抗体反応と同じ時間経過で好酸球の浸潤がヒスタミンH1受容体を介して誘発されることを確認した。また、肥満細胞が抗原抗体反応などの脱顆粒刺激に応じて活性酸素を産生遊離することを我々は明らかにしているので、肥満細胞の放出する活性酸素が、好酸球を特異的に遊走させるケモカインであるMIP-1α産生に関与しているのではないかと仮説をたて検討した結果、過酸化水素を肥満細胞に作用させると抗原抗体反応と同様にMIP-1 α mRNAの発現亢進が認められ、この発現亢進はカタラーゼの共存により消失することを確認した。さらに、ラットにおけるMIP-1 αのpromotor領域の塩基配列は報告されていないので、報告されている齧歯類のMIP-1αのpromotor領域の塩基配列を参考にして独自にprimerを作成して検討し、sequenceの結果から、ラットMIP-1αのpromotor領域の塩基配列には活性酸素関連の転写調節因子の結合部位が認められた。以上の結果から、慢性アレルギー疾患発症には、IgE抗体を介する抗原抗体により遊離したヒスタミンおよび活性酸素が周辺の細胞あるいは肥満細胞に作用して、好酸球の遊走活性を示すMIP-1αなどのケモカイン産生を促進し、遊走してきた好酸球がアレルギー反応の慢性化あるいは遷延化に関与していることが強く示唆された。
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