実験にはHartley系雌性モルモットを用い、卵白アルブミンを抗原として感作した。感作14日目の鼻粘膜に抗原溶液を点鼻して抗原抗体反応を惹起させた。血管透過性亢進、くしゃみおよび鼻掻き行動によりアレルギー反応の即時相を確認した。点鼻後6、12、24、48、72時間後に鼻組織を採取し、鼻中隔部位の組織標本を作製し、ルナ染色を行った。その結果、点鼻6時間後より鼻粘膜中への好酸球の集積が観察され、24時間後にその集積は最大になった。この集積増大は、抗PAF薬、LT受容体拮抗薬により有意に抑制され、抗ヒスタミン薬により一部抑制された。また、点鼻後鼻粘膜に抗原抗体反応によりMIP-1 α mRNAの発現亢進されることが明らかになった。ラット腹腔肥満細胞において抗原抗体反応によりMIP-1 α mRNAの発現亢進も確認しているので、鼻粘膜によるMIP-1 α mRNA発現に肥満細胞も関与していることが強く示唆された。また、無感作モルモットにヒスタミンを点鼻すると、抗原抗体反応と同様の時間経過で好酸球の浸潤がヒスタミンH1受容体を介して誘発されることを確認した。更に、過酸化水素を肥満細胞に作用させると抗原抗体反応と同様にMIP-1α mRNAの発現亢進が認められ、この発現亢進はカタラーゼの共存により消失することを確認した。そして、ラットMIP-1 αのpromotor領域の塩基配列に活性酸素関連の転写調節因子の結合部位の存在を確認した。以上の結果から、慢性アレルギー疾患発症には、IgE抗体を介する抗原抗体により遊離したヒスタミンおよび活性酸素が周辺の細胞あるいは肥満細胞に作用して、好酸球の遊走活性を示すMIP-1αなどのケモカイン産生を促進し、遊走してきた好酸球がアレルギー反応の慢性化あるいは遷延化に関与していることが強く示唆された。
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