研究概要 |
研究成果の第一は,今年度新たに,チロシンキナーゼ系として上皮増殖因子(EGF)受容体を追加し,.その情報伝達経路へのGタンパク質系のクロストークについて解析したところ,これまでに全く報告例のない,EGF刺激によりインスリン受容体基質のチロシンリン酸化を伴うホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI 3-K)の活性化を見出すとともに,Gタンパク質受容体を前もって刺激しておくことで,このPI 3-Kの活性化が増強されるという新たに知見を得たことである.Gタンパク質系受容体刺激に伴うEGF受容体のトランスアクチベーションも最近報告され始めており,本研究で用いた実験系の更なる解析は,チロシンキナーゼ系とGタンパク質系とのクロストークを解明するうえで重要な情報を与えうるものと期待される. 第二の研究成果は,食細胞においてチロシンフオスファターゼの一つであるSH-PTPlが常にCblと会合しており,SH-PTPlの活性がそのチロシンリン酸化よりもむしろPKCによるセリンリン酸化に依存して負の制御を受けている点を明らかにしたことである.昨年度,PMA処理により食細胞の抗体受容体刺激が遮断される機序として,Cbl自身と会合するチロシンキナーゼの存在を明らかにし,Cblがチロシンキチーゼ,PKC両者の基質として異なった情報伝達系に寄与している可能性を示した.それに加えて本年度の研究成果は,Cbl/SH-PTPlもまたチロシンキナーゼ,PKC両情報伝達系の制御下にあることが判明したことで,チロシンキナーゼ,PKC両情報伝達系においてCblがクロストークの中心に位置することをさらに裏付けるものであろう.
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