研究概要 |
ATP受容体チャネルの4つのサブクラスのcDNAをスイスおよび米国の研究グループから入手した.4つのサブクラスのうち,P2X3およびP2X4はすでに組み込まれているプラスミドの状態で,P2X1およびP2X2については別のベクターに組み込み直して使用した.これらのcDNAよりRNAをin vitro転写し,アフリカツメガエルの卵母細胞に注入,インキュベートすることにより各ATP受容体チャネルを発現させた. 当研究室では神経様培養細胞クローンPC12細胞を用いてATP受容体チャネルの電気生理学的および薬理学的な性質を解明してきた.これらの知見をもとに,発現させたATP受容体チャネルのサブクラスに対するドパミン,セロトニン,亜鉛,カドミウムの作用を検討した.その結果,これらの化合物はP2X2およびP2X4に対しては促進的に作用するが,P2X1およびP2X3に対しては影響しないことが判明した.これらの化合物はいずれも正に帯電しており,ATP受容体チャネル内の負に帯電する酸性アミノ酸残基と相互作用する可能性が考えられた.4つのサブクラスのアミノ酸配列を比較したところ,P2X2およびP2X4のみに共通する酸性アミノ酸残基が3箇所見い出された.P2X2受容体を対象としてこの3箇所に人為的に改変を加えたところ,315番目のアスパラギン酸がこの促進作用に関与することが明らかとなった. この他,発現させたATP受容体チャネルを用いて3価イオンおよびpH変化の影響について検討を行なった.3価イオンはμMという低濃度よりアロステリックな抑制効果を発揮した.また,神経アミンと2価イオンの結合部位は異なるpH依存性を示すという証拠が得られた.
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