研究概要 |
前年度の研究では,ATP受容体チャネルの4つのサブクラスが分子生物学的手法によりアフリカツメガエル卵母細胞に発現可能であることを示した.また,発現させた受容体チャネルの薬理学的性質の比較検討,受容体チャネルの人為的改変により,この受容体の神経アミン,多価イオンによる修飾機構について構造との相関性等の性質を解明した.本年度の研究では,ATP感受性,イオン透過機構等,A11)受容体チャネルの基本的な機能と構造との連関について検討を加えた.ATl)受容体チャネルは2つの細胞膜貫通領域とその間にある1つの長い細胞外領域からなり,2番目の膜貫通領域(M2)およびその近傍領域がイオン透過のための孔を形成すると予想されている.そこで,P2X受容体のM2およびその近傍に存在する電荷もしくは極性を有するアミノ酸残基のうち,7つのTP受容体のサブクラス間で保存性の高いアミノ酸残基を選び出し,電気的に中性なアミノ酸残基と置換し,変異型チャネルを作成した.これらの変異型チャネルのうち,315番目のアスパラギン酸をバリンに置換した変異型チャネルでATPに対する感受性の50倍の低下が認められた.感受性の低下はATP以外の作動薬でも認められたが,遮断薬については認められなかった.これらのことlから,このアスパラギン酸残基はチャネルの開口状態を安定化させるという推測が゙なされた.変異型チャネルに対して単一チャネル電流の記録を行なったところ,333番目のアスパラギンをイソロイシンに置換した変異型チャネルでチャネル電流の減少が認められた.この結果はこのアスパラギンがチャネル孔に位置し,透過しようとする陽イオンの濃度を高める効果があることを示唆するものと考えられた.
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